2016年10月24日

犬と猫のてんかんセミナーなど

しばらく穏やかな陽気が続いている東京ですが晴れ

秋は勉学にも適した季節ということで本


続けて2本、獣医学関係の講演会に行ってきました犬(笑)


文章だけだと味気ないので犬の画像を入れますが
画像は講演会の内容とは関係ありません顔(ペロッ)



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まず、日本獣医生命科学大学の柿沼美紀先生の

「バイリンガルなイヌのヒミツを探る」演劇


発達心理学や教育心理学がご専門の柿沼先生ひらめき
犬が人間とコミュニケーションを取る時には
犬同士の時とは違う表現(鳴き方、表情、動きなど)をする事に注目して
それを「バイリンガルな能力」と表現されていました


これは大昔に犬の祖先が人間と共生する様になった時に
人間とのコミュニケーションの上手い個体が人間から食べ物をもらったりして
次第に両者の間に共通のコミュニケーション言語が出来上がり
人間の近くで生活する個体が家畜化し
その子孫が現在の犬となっていったのではないか犬(足)


その高度なコミュニケーション能力を使って
病院などでの動物介在活動が行われたりする一方
飼育放棄されたり悪質な繁殖業者にケージに閉じ込められて育った犬は
人間とのコミュニケーションが上手く出来なくなったりします
犬のコミュニケーション能力が遺伝や環境に影響を受けるという事を
発達心理学的に考えるというものでした


犬がお散歩やおやつをねだる時の鳴く時や
飼い主の顔をじーっと見つめて何かを訴えかける時目
そこには長い長い人と犬との関わりの歴史があるんですね〜犬(足)


柿沼先生の講義は前期に聴講した「人間動物関係論」の中にも有ったのですが
とても優しい語り口で人と動物の関わりについてわかり易く教えてくださいました


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演劇続いて、同じく日獣大の長谷川大輔先生による

「犬と猫のてんかん 獣医学領域におけるてんかん治療」



長谷川先生と言えば・・・

そうです、シオンが長年お世話になったジャニーズ先生ですひらめき
大学の医療センターでは脳神経外科と放射線科を担当されています病院


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脳神経の専門医の先生というのは少ないと思うので
私も以前、勉強会の講師として来てもらえないかと考えたんですが
長谷川先生は何しろお忙しい様であせあせ(飛び散る汗)

大学の授業や診療の無い日もセミナーや講演会のスケジュールがびっしり

1年くらい先じゃないとスケジュールを押さえられなさそうで
ちょっと実現できませんでした失恋


獣医師だけでなく人間の脳神経学会でのお仕事も多いそうで
一般市民向けのセミナーはなかなかないので
今回は本当に貴重な機会でしたぴかぴか(新しい)


シオンの病気のこともありますが、拙ブログには「脳炎」「発作」などのキーワードで検索してこられる方が多いみたいですのでパソコン


今回のセミナーを私が理解した範囲でご紹介したいと思います犬(笑)


ちょっと長くなりますので、興味の無い方はスキップしてくださいね右



てんかんの定義

はじめに、「てんかん」の定義ですが
国際抗てんかん連盟(ILAE)によると

「24時間以上あけて 少なくとも2回以上の非誘発性(あるいは反射性)のてんかん発作を有する」

という状態をいいます
ですから、一生に一度だけ発作が起きた事があったとしても、それだけで「てんかん」と診断することはできないという訳です


そして、てんかん発作が起きるのは人間や犬猫だけではありません
サルの仲間はもちろん、牛や馬、カバ等の哺乳類はもちろん
鳥や魚、なんとハエにもてんかん発作があるのだそうです
今回長谷川先生がそれらの動画を見せてくださってびっくりしました


さて、そこで本題の犬と猫のてんかんについてですが
てんかんの定義は人と同じで「24時間以上あけて2回以上」です



てんかんの分類


てんかんは次の様に分類されています


1.特発性てんかん(とくはつせい)
   a.素因性てんかん
   b.おそらく素因性てんかん
   c.原因不明のてんかん

2.構造的てんかん


2.の構造的てんかんが脳奇形、脳腫瘍や脳炎など
頭蓋内または脳の病気が原因で起こるのに対して

1.の特発性てんかんは遺伝的な素因以外に原因となる明らかな異常が無いものです



長谷川先生が過去10年の統計を取ったところ

大学病院に「発作が起きた」という理由で来院した犬の中で
「てんかんの定義」に当てはまる犬たちの内
「特発性てんかん」は48%
「構造的てんかん」は21%
MRI検査などが出来ず診断に至らなかった不明例が31%になるそうです

発作起こす犬の割合というのは犬全体の2%以下なのだそうで
確かに私もシオンが病気になるまでは、回りに発作を起こした子はいませんでした
一般の病院では患者の1%以下ということですから、街の獣医さんでは果たして年に1頭当たるかどうか・・・
知識として知っていたとしても、実際に治療の経験が無い獣医さんもいると思います
でも、少ないとは言え確実に一定の割合で発症する子がいる訳ですから
長谷川先生の様な専門医の存在はとても重要だと思いました




特発性てんかんは、犬に多く猫には比較的まれだそうです

●原因となる病気が無いので、てんかん発作を繰り返すこと以外の症状はありません
「真のてんかん」「原発性てんかん」とも呼ばれています

●このてんかんの発作が最初に起こる年齢は6カ月〜6歳と若齢です

●この中で「素因性」と呼ばれるものは原因となる遺伝子が同定されていて、
 起こりやすい犬種が有ります
●「おそらく素因性」は原因遺伝子はわかっていないけれど
 同じ品種での有病率が2%を超えるもので、
 これも犬種によって起き易さがあり、中には1割を超えるものもあります

※これは私の感想ですが、素因性てんかんの起きやすい犬種に使役犬グループの犬が多いという事は、人間が自分の役に立つように品種の改変を行った結果、特定の犬種に病気が出やすくなった可能性があるのではないでしょうか

●特発性てんかんの診断には血液検査や尿検査など街の獣医さんで行えるものもありますが、このレベルでわかるのは発作が循環器や腎臓病などの病気によるものではない、という段階までです
それ以上の確定診断をする為にはMRIや脳脊髄液検査で脳の病気が無いか(構造的てんかんではないか)を調べたり、さらに高度な検査では脳波を取ったりしなければなりません

MRIの画像検査に於いても、そこに写し出された画像から何を読み取るかは高度の専門性と熟練が必要ですので、その意味でも専門医を受診する意義があるのではないでしょうか




発作の型


発作の起き方は色々なのですが、大きく分けると「焦点型発作」と「全般発作」に分けることができます


●焦点型発作は、以前は「部分発作」と呼ばれていたもので、脳の一部で電気的な異常が起きることにより、体の一部に痙攣や不随意運動が起こったり、理解不能な行動が現れたりする様です

●全般発作は、電気的異常が脳全体に起きているので、全身の突っ張り、けいれん、ピクピクした動きが起きたり、急に全身が脱力することもあるのだそうです

最初は焦点型発作から始まって、電気刺激が脳全体に広がって全般発作に移行していくことも多いのですが、動物の場合は本人から話を聞くことができないので、飼い主が気づいた時には全般発作になっているということが多いのではないかというお話でした

シオンは寝ていて急に体を痙攣させる全般発作になることが多かったのですが、もしかしたらその前に細かい予兆的な焦点発作が起きることも有ったのかもしれませんね




犬猫のてんかん治療


お宅のワンちゃん、にゃんこさんが「てんかんの定義」にあてはまる時
「治療はどうするの?」という話ですが

●原因となる病気が無く、発作の頻度が低くて生活に支障が無い場合は
何もせずに経過観察という事もあります

●また、私も多くの飼い主さんから聞いた事があるのですが
発情期に発作が起こりやすくなることがあります
ホルモンバランスが脳に何らかの影響を与えるのかわかりませんが
その場合は避妊・去勢手術をすることで発作を起こす回数を減らせるかもしれません

●強い光や大きな音に反応して発作が起きてしまう等の場合は生活環境を整えることも有効です

●治療が必要な場合、多くは抗てんかん薬の投与が行われますが、外科手術が適用になる場合もあります

●その他、食事療法や東洋医学(鍼)が有効な場合もあるそうです



この中で、「抗てんかん薬を始めるのはいつが良いのか?」ですが
獣医師のてんかん学会の指針によると

※6か月に2回以上のてんかん発作があるとき
※発作重積(全般発作で5分以上、焦点発作で10分以上続く)
 あるいは群発発作(24時間以内に2回以上)のとき
※発作後に攻撃性が強まる、失明する等の重篤な兆候が現れたり、
 それが24時間以上続いたりするとき
※構造的てんかんが明らかな場合


シオンの様に構造的てんかんが明らかな場合は、その病気の治療と並行して抗てんかん薬治療が行われることになります


抗てんかん薬治療を始める際、人間の医療と違って獣医療では必ずしも発作がゼロになる状態を目指すものではないそうです

もちろん、ゼロに出来るならそれに越したことはないのですが、薬の副作用やその動物のQOLと寿命などを考えて


明らかな臨床的・神経学的異常と明らかな副作用・QOLの悪化を伴わずに発作頻度を6か月(3か月)に1回以下の頻度にコントロールすること

というのが獣医療での理想的・合理的な目標になるのだそうです



初めて抗てんかん薬治療を始める時の目標としては以下の通りです下

 ☆発作の頻度を治療開始前の50%にする
 ☆重積や群発発作無し
 ☆重篤度、持続時間、発作後期の軽減


シオンは発症後ほとんどの期間月に1回ペースで全般発作が起きていましたが、減薬を試みた時を除いては発作の頻度が上がる事はなかった為、長谷川先生からは「この程度なら許容範囲としましょう」と言われていましたくすり



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犬猫で用いる抗てんかん薬


●良く使われる薬
  フェノバルビタール(犬・猫)
  ゾニサミド(犬・猫)
  臭化カリウム(犬)
  レベチラセタム(犬・猫)
  ジアゼパム(猫)

●まれに使われる薬
  ガバペンチン/プレガバリン(犬・猫)
  トピラマート(犬)
  エトサクシミド(脱力発作で)
  フェルバメート(犬・アメリカで)
  イメピトイン(犬・ヨーロッパで)

●発作重積の時に静脈注射
  ジアゼパム/ミタゾラム
  レベチラセタム
  プロポフォール
  ベントバルビタール


※犬・猫では使えない薬
  カルパマゼピン
  バルフロ酸
  ラモトリギン
  プリドミン
  フェニトイン
  ビガバトリン

※まだわからない薬
  ルフィナミド
  ペランスパネル
  オクスカルバゼピン
  プリパラセタム
  ラコサミド


ずいぶん色んな種類の薬がありますね〜くすり
一番上の良く使われる薬はシオンも使いました
シオンは壊死性髄膜脳炎という病気が有ったので、この他にステロイドや免疫抑制剤も使った訳ですが、薬の変更や量の増減についてはいつもすごく慎重にやってきたと思います


ひらめきここで長谷川先生から飼い主さんへ大事なお願いです


犬や猫のてんかんの薬について、
人間のお医者さんやその他、人間の医療関係者に聞かないでください
また、それに従わないでください

獣医師に聞いてください



愛するペットが発作を起こす姿はかなりショッキングなものですし爆弾
「死んでしまうのでは?」と不安になる気持ち、よくわかりますふらふら

掛かりつけの街の獣医さんで薬をもらったけど、効いているのかどうかよくわからない失恋
そこで飼い主が子供の頃からお世話になっている小児科の先生に相談したら
「人間のてんかんに効くいい薬が有るよ」なんて言われたら・・・


でも、仮に近所の街の獣医さんに聞いて良くわからなかったとしても
人間のお医者さんに聞いて勧めらえた薬を飲ませたりするのは危険だそうです

人間と犬猫とは代謝の仕方などが違うので、人間に効く薬でも犬猫には飲ませてはいけないものがあるからです


当たり前の様に思いますが、結構いらっしゃるんです、そういう飼い主さんあせあせ(飛び散る汗)




犬のてんかんの予後



さて、いよいよ最後の項目です手(グー)

愛犬がてんかんの発作を起こした時、飼い主は「このまま死んじゃうのでは」と思う事がありますが犬(泣)


果たして本当にそうなのでしょうかひらめき


長谷川先生の統計によりますと目


●特に原因となる病気の無い特発性てんかんの犬の場合

てんかん発作のコントロールが良好な場合は
平均寿命は一般のてんかんの無い犬と変わらない
そうです手(チョキ)

特発性てんかんの子の飼い主の皆さん、わが子の突然の発作に驚かれると思いますが、必要以上に悲観して怖がらないでください

きちんと病院で診断してもらって、必要な場合は薬を飲ませたりしながらくすり
その子が安心して暮らせる環境を作ってあげれば家


普通の子と同じ様に長生きすることも出来るのですから犬(笑)


●発作重積や群発発作のコントロールが難しい特発性てんかんや
 脳の病気などを抱えている構造的てんかんの場合
 その子の寿命はもう少し短くなってしまうかもしれません病院

でも、犬や猫は自分の病気を悲観したり将来を嘆いたりはしないと言いますから
飼い主さんと過ごす毎日が幸せであれば
長生きな子に負けない位、幸せのてんこ盛りにしてやれるかもハートたち(複数ハート)
そんな風に思って私はシオンと過ごしていました犬(足)


「飼い主の笑顔はそこらへんのサプリより効く揺れるハート」というのが私の座右の銘です顔(笑)


病気の子の飼い主の皆さん、お互いにがんばりましょうね手(グー)



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長々と読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m

これだけまとめるのに4時間かかっちゃった〜顔(なに〜)



ニックネーム 雨 at 14:52| Comment(4) | わんこの健康 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
てんかん、読ませていただきました。そらは9ヶ月の時始めて発作を起こしました。大学病院でのMRIや諸々の検査で後頭孔形成不全やてんかんとか・・あのときの気持ちは今でも思い出すと震えます。薬で今は発作は落ち着いていますが減薬をすると発作をおこします。あの発作を見ると息苦しくなりかわってあげたいと思います。先生曰くうちに来るべく子だったと。たぶんケンみたいに19年も無理だろうけど毎日楽しく頑張ろうねと言ってます。なんでもしてあげるつもりです。
Posted by そらバーバー at 2016年10月24日 20:01
>そらバーバーさん
 まだ9カ月で突然の発作、本当に驚かれたと思いますふらふら
大きな発作が起きている時には意識は無くて本犬には苦痛も無いのだと言いますが、苦しそうに痙攣する姿を見ているのはとても辛いですよねもうやだ〜(悲しい顔)

でも、元気にお散歩するそらちゃんはとても楽しそうで、病気を抱えている様には見えませんでした犬(足)
お薬を飲んだり大変な事も多いと思いますが、そらちゃんはご家族に会えて誰よりも幸せなワンコだと思います犬(笑)
「楽しくがんばる」って素敵な言葉ですねぴかぴか(新しい)
私も日々楽しくがんばっていきたいと思います手(チョキ)
Posted by 雨 at 2016年10月25日 09:25
さすが雨さん、本を出せそうなくらい完璧なまとめです。勉強になるわ〜〜。素晴らしい!
Posted by ショコママ at 2016年11月02日 19:29
>ショコママさん
 簡潔にまとめられずに長くなって読みにくくてすみませんm(_ _)m
保護ワンコで脳神経疾患の有る子も皆元気に幸せになれる様に祈っています
Posted by 雨 at 2016年11月03日 18:08
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